彼は大阪に帰ってしまった。
そもそも医療事務を取るために東京来たって言ってたのに、Cくんが医療事務の勉強してるとこ一回も見たことなかったなあ。
医療事務の試験
そして医療事務の試験の日。試験を終えたCくんから連絡が入った。
C「おつうまくん、試験終わったわ」
僕「おお、どうやった?」
C「いやー、医療事務の試験って教科書持ち込み可やのに、教科書全部持っていくの忘れてなー」
僕「お、おう・・・」
C「まあ、なるようになるんちゃうかな」
僕「そうかー、ひとまずお疲れさまやね」
マジか!持ち込み可の試験で持ち込み忘れたとか聞いたことないぞ!
勉強してる兆しもカケラも無かったし、まあアカンやろな・・・
そして合格発表
そして医療事務の結果発表日。
C「おうつまくん、受かったわ!」
僕「!!!」
C「いやー、教科書忘れても何とかなるもんやなー」
今考えても彼があの状態から医療事務通るなんて奇跡に近い。すげえな(笑)
そして人生が変わった
Cくんは医療事務の資格を取ってから、人生に対する向き合い方が変わった。
ちゃんと病院に就職し、真面目に勤務し、患者さんと真摯に向き合い・・・
とにかく今までと180度違うと言っても過言ではないくらい変わったのだ。
しかもあれからもう20年くらい経つわけだけれども、まだちゃんと仕事続いてる。
こないだCくんから電話がかかってきた。
C「おうつまくん、俺、課長になってん!ちゃんと部下の人もおんねんで!」
僕、その電話もらったとき、マジで涙腺ゆるんだよ。しかも20年近く経った今でもちゃんと報告してきてくれて。
しかも今はキレイな奥さんとかわいい女の子もいて、家まで買って、なんか20年前を知ってる僕からすると、本当に不思議な感じ。
お正月に招かれる
C「おうつまくん、お正月、大阪帰ってきてるんやったら俺の実家来てや。お父さんとお母さんが会いたいって言ってんねんやんかー」
僕「おう、行く行くー」
でCくんちに行ったら、むっちゃ豪華なおもてなしを受けてしまって。
そんなこと全然想像してなかったので驚いていたら、ご両親からめちゃんこ御礼を言われて。
ご両親「うちの子、本当にどうしようもない子やったでしょ。それがいきなり『おうつまさんのところに行く』って言って東京に飛び出して。で、帰ってきたら人が変わったかのようにちゃんと仕事して、結婚もして子供もできて。もうなんて御礼を言ったらいいか分からないです。本当にありがとうございます。」
確かに、もし僕が同じ親の立場で、おかしくなってた長男が数ヶ月誰かのとこに転がり込んで帰ってきたらめっちゃ真面目になってたら、やっぱ同じことするだろうなー。でも僕は今回は居場所を提供しただけで、その他はほんとに何にもしてないけど(笑)
僕「いえいえ、僕は何もしてませんから」
ご両親「ところで、息子に何を言ってくださったんですか?」
僕「え~と・・・」
正直、何を言ったかって聞かれて、全然何も思いつかなかった。
でも彼の人生は僕といた数ヶ月で確かに変わった。今でも何が何だか分からない僕の中の不思議な体験だった。
一緒にいてよかったこと
彼は僕といて人生が変わった。
じゃあ僕は彼といて人生が変わったかというと、やっぱり変わったと思う。
僕は今でも、仕事を辞めたかった時にCくんから言われた言葉を思い出す。
「いやいや、おうつまくんはまだ行くとこがあってええやろ!俺なんか行くとこもないねんぞ!」
あの言葉がなかったら、そしてあのタイミングで僕がCくんと一緒に暮らしてなかったら、僕は結果的に17年も勤めた会社を1年で辞めていたかもしれない。
いや、かもしれないではない。きっとあの頃は辞めグセがついていたので辞めていたと思う。そしたら今の人生はなかった。
人生ってホント面白い。奇跡やな。ミラクルや!
ミラクルは連鎖する
Cくんはいまだに「あの時は家賃も半分払うって言っときながら1円も払わんかったしなー。おうつまくんに返さなあかんなー」って言ってくる。
僕は当時大親友に受けた恩をCくんに返したと思っているので、いつも「そんなん要らんから、俺に受けたこの一連のことを俺に返すんじゃなくて、次の人に返したってくれ」って答える。
ミラクルは連鎖する。
別に僕はCくんに何かをしてあげたわけじゃないけど、でもそれで何かが変わった。このミラクルを僕とCくんだけで留めるのではなく、その先まで広げていってほしい。
そしたらその時、「ミラクルはここから始まったんですね」って言いながら、そのミラクルに関わったみんなでゴハンを食べようじゃないか。
終わりに、僕の目指す姿
これからもこんな風に人と関わっていきたいっていうのが、僕の人生の目指す姿なんじゃないかっておぼろげながら感じ始めてる。
僕と交わることで考え方が変わり、心理が変わり、人生がいい方向に変わる。
これからの人生、そんなことをやっていきたいな。
20年経った今になって、Cくんに気づかされたんだなあって感じる。
もしかしたら20年前にCくんに会ったおかげで、これからの僕の人生が変わるかもしれない。それもまた一興だなあ。
おわり