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ふじもとあつし氏監督 DieAter2 パンデモニウム 所感

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ふじもとあつし氏監督 DieAter2 パンデモニウム 所感

僕には、ふじもとあつし氏という友人がいる。
初めて彼に会った時、すでに彼はコーヒーを愛してやまない人であり、そして映画監督だった。

初めて会った時のことは、下記記事に残っていた。

ふじもとあつし氏という人物

彼は当時から映画監督として、摂食障害の方たちのありのままの姿をiPhoneのみで撮り続け、たった一人で編集を重ね、DieAterという映画を創り上げていた。

しかし、彼のすごいところはそれだけでなかった。

僕がコーヒーを飲みに彼のお店に行った時に感じたのは、『摂食障害に苦しんでいる方たちが、同じ苦しみを持つ「仲間」を見つけ、悩みを共有できる場』も合わせて提供している、ということだった。

そしてコーヒーのお店をやる前は、映画館で働いていたこともあるらしい。その話を聞いた時、「それだけ映画にかける情熱が本気だ」ということの表れなんだなと感じた。

初めて会ってから1年半、そして大きなチャンス

早いもので、初めて彼と会ってからもう1年半も経ってしまう。彼はその間も同じように撮影を続け、そしてついに1つの映画を完成した。その映画の名前は『DieAter2 パンデモニウム』。

そしてこの映画が、なんと『東京ドキュメンタリー映画祭』の長編作の1つとして選ばれ、12/7の16:00から放映されるというのだ。

これは彼にとってものすごく大きなチャンス。

無名の著者が1冊の本を出すよりも、はるかに大きな偉業を成し遂げ、『東京ドキュメンタリー映画祭』という映画に携わる者なら誰もが憧れるものすごく大きな舞台で、彼の作品が公開されるのだ。

『このチャンスを、何としても成功してもらいたい』

その一心で、彼の映画の冒頭10分を特別に観させていただいたので、その感想を記そうと思う。

この映画は非日常ではない

僕がこの映画を鑑賞しはじめてからすぐに感じたことは、「この映画は非日常なのではないか?」ということ。

それくらい、自分では見たことも聞いたことも無い世界が広がっていた。このような世界が自分と同じ世界線上にあることが信じられなかった。

・・・それが摂食障害のリアル

食べる、吐く
過食、拒食

なぜ?どうして?
本人たちも分からない。

『やめろって言われてやめられたらやってない』

何人も何人も、自分の摂食障害の話をカメラの前で話している。

ナンナンダ、コノセカイハ!

正直、観ていて苦しくなる。だが、逆に彼女たちから目をそむけられない自分もいる。
作り物のホラーでも、過去に起きた戦争の話でもなく、まさに現代の今、リアルに起こっていることだから。

知らないなら知らないで過ごしていけるよ。
でも、皆さんの身近でこんなことがあるのだということを知ってほしい。
いや、知れ!

そういった彼の強い思いが、モノクロで統一された映像から蠢くように湧きあがってくるのだ。

この映画の裏にある本当の姿

だが、映画を観ていてふと気づくことがある。

悩みがある
誰にも相談できない
孤独
自分でもどうしたらいいか分からない

このように様々な理由から摂食障害に陥った女性たちが全員、彼に対して、今自分が持っている気持ちや感情をものすごく素直に吐露しているのだ。

ここに、彼に対する絶大なる信頼感と安心感がうかがえる。そして彼がこれだけの信頼を得ているのは、やはり今までの彼女たちに対する真摯な姿勢に起因するところが大きいのだろう。

この映画は、表向きには摂食障害のリアルなインタビューを通して現状を広くに知ってもらいたいというメッセージが込められている。

だがその裏に秘められた思いは、今摂食障害を持っている方々に観てもらって、『苦しんでいるのはあなたは一人じゃない』、『悩んでたら俺のところに来い!』、『一緒に苦しみから抜け出そう!』というメッセージを伝えたい、ということではないだろうか。

これが本作DieAter2が織りなす世界観の、本当の意味であり存在価値なのだろう。

本作を通して、一人でも多くの方が救われますように。

そしてあつしくん、本当におめでとう!


『DieAter2 パンデモニウム』
東京ドキュメンタリー映画祭
2020/12/7 16:00~放映(118分)




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